貧血の分類と診断
血液検査でヘモグロビン濃度の低下を認めて貧血と診断した後は、貧血を分類します。
貧血は原因、赤血球指数や形態、臨床像によって分類されます。
貧血の原因診断は、不十分な赤血球造血か、出血による赤血球喪失か、溶血による赤血球喪失かを鑑別するシンプルなものです。
実際の臨床では赤血球指数に基づく分類が有用であるとされています。
平均赤血球容積(MCV)によって、以下の3つに分けます。
- 小球性貧血
- 正球性貧血
- 大球性貧血
貧血と診断した場合に同時に行う検査項目は以下の通りです。健診や人間ドックで貧血を指摘された方はお手元の検査結果をもう一度確認してみて下さい。
- 網赤血球数(絶対数)
- 血清鉄(Fe)
- 総鉄結合能(TIBC)
- 不飽和鉄結合能(UIBC)
- フェリチン
- LDH
- 間接ビリルビン(I-Bil)
- CRP
- 腎機能検査
- 肝機能検査
病状によっては骨髄穿刺が必要になる場合もあります。この場合、当院では血液内科専門医がいる医療機関に紹介しています。
次は小球性貧血について述べます。
平均赤血球容積(MCV)が80以下の場合、小球性貧血と診断します。
小球性低色素性貧血はヘモグロビンが十分につくられていない状態です。
圧倒的に鉄欠乏が多く、以下の3つを認めると鉄欠乏性貧血と診断できます。
- 血清鉄低下
- 血清フェリチン低値
- TIBC上昇
少し専門的になりますが、TIBCは鉄を運ぶタンパク質であるトランスフェリン量を示しています。
血清フェリチン値は貯蔵鉄(鉄の貯金のようなものです)の目安として測定します。
フェリチン測定は速やかな診断のために必要となります。
鉄欠乏性貧血と診断した場合は、鉄剤を内服することが原則となります。
鉄欠乏性貧血は原因を明らかにすることが重要です。
鉄欠乏性貧血については、別の項でも詳しく解説します。
小球性貧血は、自己免疫疾患などによる慢性炎症の場合でも高頻度に認められます。
鉄欠乏性貧血が否定された場合は、炎症の存在の有無を確認します。
小球性貧血には、稀にサラセミア(先天性グロビン合成障害)や鉄芽球性貧血も存在します。これらが疑われた場合は、診断のために骨髄穿刺などの専門的検査が必要となるため、当院では血液内科専門医がいる医療機関に紹介しています。
次に大球性貧血について述べます。
平均赤血球容積(MCV)が101以上の場合、大球性貧血と診断します。
少し専門的になりますが、大球性貧血はDNA合成障害を意味しています。
大球性貧血では、まず巨赤芽球性貧血を疑います。
巨赤芽球性貧血は、胃切除後10年以上経過して発症する人や、高齢者の場合は汎血球減少で見つかる人もいます。
大球性貧血では以下を測定します。
- ビタミンB12
- 葉酸
ビタミンB12の軽度低下でも治療によって著明に改善する場合もあります。
ビタミンB12欠乏や葉酸欠乏以外の大球性貧血の場合、骨髄穿刺を検討します。
次に正球性貧血について述べます。
平均赤血球容積(MCV)が81~100の場合、正球性貧血と診断します。
正球性貧血の鑑別診断は多岐にわたるため、まず網状赤血球の絶対数で2つに分けます。
網状赤血球数増加がある場合、溶血性貧血か急性失血を疑います。
貧血の程度、進行状態、全身状態によっては緊急治療が必要になる場合もあります。
溶血性貧血の診断のポイントは以下の通りです。
- 詳細な家族歴の確認
- AST上昇
- 関節ビリルビン上昇
- LDH上昇
上記の検査結果を認めて、溶血性貧血を疑った場合は専門的検査が必要となりますので、当院では血液専門医がいる医療機関に紹介しています。
参考までに溶血性貧血の鑑別診断を挙げます。遺伝性か後天性か分けて考えます。
- 遺伝性球状赤血球症
- 遺伝性楕円赤血球症
- 自己免疫性溶血性貧血
- 発作性夜間血色素尿症
次に網状赤血球が正常もしくは減少している場合ですが、貧血のみか白血球減少や血小板減少を伴うか否かで分けます。
貧血のみの場合は以下の疾患を疑います。
- 赤芽球癆(診断に骨髄穿刺が必須)
- 腎性貧血(エリスロポエチン濃度で診断)
- 続発性貧血(原因は脾機能亢進症、内分泌疾患:甲状腺、悪性腫瘍)
貧血に白血球減少や血小板減少を伴う場合は以下の疾患を疑います。
- 再生不良性貧血
- 骨髄異形成性症候群
- 発作性夜間血色素症
- 骨髄線維症
- 多発性骨髄腫
- 白血病
- 血球貪食症候群
- 癌の骨髄転移
上記のいずれにしても確定診断のために骨髄穿刺が必要となります。