肝臓機能異常を指摘された方へ
健診や人間ドックで肝臓機能異常を指摘され、再検査や精密検査をすすめられる方が多いと思います。
しかしながら、肝臓の数値異常は無症状のケースが多いため、急いで受診するという気持ちにどうしてもなりにくいというのが実情です。
肝臓機能異常を指摘されても、どこを受診していいのかわからない、という方もいらっしゃると思います。
肝臓機能異常を指摘される場合は、パターンがあります。
いわゆる「法定健診」で検査を指定されている肝臓の検査項目は次の3つであり、これらが高値を示した場合は、肝臓機能異常を指摘されます。
・ AST(GOT)
・ALT(GPT)
・γGT(γGTP)
各検査機関でASTやALTの正常範囲が設定されていますが、肝臓の専門医はALT 30以上は異常値であり、異常値が6か月以上続く場合は慢性の肝臓疾患が存在すると考えて検査を行います
この件に関しては、2023年の日本肝臓学会総会で「奈良宣言」として公表されました。
当院では、肝臓の再検査もしくは精密検査をすすめられた患者様には、次の13項目を測定しています。
・AST(GOT)
・ALT(GPT)
・ γGTP(γGT)
・ ALP
・ LAP
・ LDH
・ ChE(コリンエステラーゼ)
・ T-Bil(総ビリルビン)
・ D-Bil(直接ビリルビン)
・ I-Bil(間接ビリルビン)
・ TP(総蛋白)
・ Alb(アルブミン)
・ T-Cho(総コレステロール)
このうち、ASTとALTは「逸脱酵素」と呼ばれており、「肝臓の細胞がどの程度こわれているかどうか」の目安になります。
肝臓の細胞には寿命がありますので、新陳代謝として古い細胞は新しい細胞に入れ替わります。
古い肝臓の細胞がこわれた場合、細胞内に含まれていた酵素、すなわちASTやALTが血液中に放出されます。
そのため、ASTやALTは「逸脱酵素」と呼ばれています。
逸脱酵素であるASTやALTが30を超えて血液中に放出されると、新陳代謝以上に肝臓の細胞がこわれているサインとなります。
これがいわゆる肝臓の障害(肝臓機能異常)です。
当院では肝臓の再検査や精密検査をすすめられた患者様に肝臓の障害の原因を調べるための検査を行っています。具体的には次の通りです。
・ B型肝炎ウイルス検査(HBs抗原測定)
・C型肝炎ウイルス検査(HCV抗体測定)
・甲状腺機能検査(TSH、FT4)
・免疫検査(IgG、IgM)
・腹部エコー(腹部超音波検査)
これらの検査を行うと、肝臓機能異常の原因をある程度絞り込むことができます。
肝臓機能異常の原因として多いものは次の通りです。
・脂肪肝
・薬剤の副作用
・サプリメントの副作用
・飲酒量が多い(アルコール性肝障害)
・急激な体重増加(肥満)
上記については、診察時の問診と腹部エコー(腹部超音波検査)で評価することができます。
・ASTやALTの数値が著しく高値である場合は、急性の肝臓障害(急性肝炎)の可能性を考えて精密検査を行います。
具体的には次の通りです。
・A型急性肝炎の検査(HAV-IgM抗体)
・B型急性肝炎の検査(HBc-IgM抗体)
・E型急性肝炎の検査(HEV-IgA抗体)
・サイトメガロウイルス肝炎の検査(CMV-IgM抗体)
・伝染性単核球症の検査(EBウイルスの検査:EB-VCA-IgM抗体)
・病状や検査結果により、入院が必要になる可能性がある場合は。地域連携している病院に紹介させていただきます。
・具体的には、大阪医療センター、北野病院、大手前病院、大阪警察病院、済生会中津病院、市立総合医療センター、JCHO大阪病院です。
・肝臓機能異常を指摘されて、医療機関を受診すること検討されている方は、当院にお越しください。