脂肪肝:MASLDについて
脂肪性の肝疾患について、新たに作られた疾患概念「MASLD:マッスルド」についてお知らせします。
・日本では、肝がんや肝硬変(肝臓が慢性的なダメージを受けて硬くなること)の原因として、「飲酒に関連しない、生活習慣の乱れが原因とされる脂肪肝」の割合が増加しています。
・これまでは、飲酒に関連していないことから「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:ナッフルド)」と呼ばれていましたが、近年欧米を中心に「alcoholic(アルコール依存症)」や「fatty(肥満者)」のような表現を避けるために「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患:metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease:MASLD:マッスルド」と名称が変更されました。
・肝臓に脂肪が蓄積していることに加えて、過体重、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、生活習慣病などがある患者さんの場合は、飲酒量の違いによって、上記のMASLD、またはMetALD(メットエールディー:代謝機能障害アルコール関連肝疾患)と診断します。
・また、血液検査や画像検査、組織検査によって肝臓の硬さ(「肝臓の線維化」といいます)を調べ、肝硬変やそれに近い状態だった場合には、食道静脈瘤や肝がんの検査も行うことになります。
・食道静脈瘤の検査は上部消化管内視鏡(胃カメラ)で行います。消化器内科の仕事です。
・肝がんの検査は、血液検査(腫瘍マーカー2項目:AFPとPIVKA-Ⅱ:必要であればAFP L3分画)、腹部超音波検査(腹部エコー・腹部造影エコー)、腹部CT検査(ダイナミック造影CT)、腹部MRI検査(EOB-MRI)を行います。
・肝臓専門医、肝臓内科は患者さんの病状に応じて、上記の精密検査の必要性を判断して、今後の方針を明確に決めることが仕事のひとつです。
・MASLDの治療は、生活習慣の改善と関連する疾患の管理が中心になります。
・MASLDは心血管疾患(心筋梗塞や脳梗塞など)のリスクを高めるため、全身の疾患にも関連しているため、注意が必要です。
・治療には生活習慣の改善が重要であり、過体重の場合には摂取カロリー量の調整や、フルクトース(果糖:くだものやハチミツ、砂糖に含まれています)の摂取コントロールといった食事療法や、有酸素運動(歩く・走る)など行うことで、現在の体重から3~10%の体重減少を目標としましょう。
・糖尿病、高血圧症、脂質異常症など生活習慣病の適切な管理も必要となりますので、かかりつけの医療機関に相談してみてください。
・MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)とMetALD(代謝機能障害アルコール関連疾患)の診断は以下の通りです。
・まず、肝臓に脂肪蓄積があり(腹部エコーで脂肪肝を指摘されるなど)、肥満/過体重があり(BMIが高値であるなど)、2型糖尿病、高血圧症、脂質異常症があることなど(薬物治療を受けていなくでも健診やドックなどで指摘されたことがある)が前提となります。
・飲酒量の違いによって、MASLDとMetALDを分けます。
・MASLDは、「無~少量飲酒」です。具体的には、男性でアルコール210g/週未満(例:ビール750mL/日未満)、女性でアルコール140g/週未満(例:ビール500mL/日未満)が基準となります。
・MetALDは、「中等度飲酒」です。具体的には、男性でアルコール210~420g/週(例:ビール750~1500mL/日)、女性ではアルコール140~350g/週(例:ビール500~1250mL/日)が基準となります。
・「自分は脂肪性肝疾患かも・・・」と思われた方は、天神橋みやたけクリニックにご来院ください。