肝臓の働き:解毒
・ 肝臓には多くの機能がありますが、その中でも重要なもののひとつが「解毒」です。
・ 肝臓はアルコールや薬などの有害物質を分解して、体に悪影響が出ないように無毒化します。
・ また、代謝の過程で発生した有害物質(代謝産物)を無毒化して、尿や胆汁とともに体外に排出させます。
・ 例えば、アルコールは肝臓においてアルコール脱水素酵素によってアセトアルデヒドに分解され、さらにアセトアルデヒド脱水素酵素によって無害な酢酸に変換されています。
・ 肝臓が弱ってくると解毒機能が低下して、少量のお酒でもすぐに酔ってしまうようになります。解毒機能が低下すると、アルコール→アセトアルデヒド→酢酸への変換が進まず、アセトアルデヒドが体内に長くとどまることになるからです。
・ アセトアルデヒドは毒性が強く、頭痛、吐き気、顔面の紅潮、全身倦怠感などを引き起こします。
・ もうひとつ例をあげると、腸管内でタンパク質から有害なアンモニアが産生されますが、肝臓はアンモニアを尿素に変換して無毒化し、尿と一緒に体外へ排出させます。
・ 肝臓の機能が低下して、アンモニアが無毒化されないまま全身を回ると、アンモニアが脳に到達してしまって、意識障害を引き起こします。これを「肝性脳症」といって肝硬変末期の症状の一つです。
・ 肝硬変になって解毒の働きが低下してしまうと、アンモニア以外にも体内にさまざまな有害物質が大量に蓄積してしまうようになります。
・ 寝ても休んでも解消されない疲労が常に続き、身のおきどころがないような重い疲労感に悩まされることになります。
・ もうひとつ例をあげると、筋肉に蓄えられたグリコーゲンからエネルギーを得ると、乳酸に分解されます。
・ 乳酸と乳酸が作られる過程で発生する水素イオンの作用で筋肉のpHバランスが酸性になることが疲労の原因のひとつと考えられています。
・ 肝臓には乳酸を減らす働きがあります。乳酸からグリコーゲンに再合成して、エネルギーとして使えるように変換しています。肝臓の機能が低下すると、乳酸→グリコーゲンの変換も進まなくなります。
・ もうひとつ例をあげると、肝硬変になって肝臓の機能が低下すると薬剤の解毒ができず、副作用が強くなってしまうため、癌に対する抗がん剤治療を受けることができなくなってしまいます。
・ このように肝臓の機能が低下すると、代謝の過程で生じたさまざまな有害物質を無毒化して、尿や胆汁の中に排泄することができなくなってしまいます。
・ この結果、有害物質が全身を回ってしまうため、さまざまな症状を引き起こすことにつながっていきます。