ピロリ菌と胃がん
ピロリ菌と胃がんの関係について述べます。
これまでの研究報告で、胃がんとピロリ菌との密接な関連についてはすでに明らかです。
1994年に世界保健機構(WHO)は、ピロリ菌を発癌物質として認定し、「ピロリ菌除菌により胃がんの予防効果があることが証明された」と発表しました。
日本の研究によると、「早期胃がんの治療後にピロリ菌を除菌した患者さんは、除菌をしなかった患者さんと比較して、3年以内の新しい胃がんの発生率が約3分の1だった」と報告されています。
このように、ピロリ菌を除菌すると、新しい胃がんが発生する確率を減らせる可能性があります。
日本では2013年2月から「ピロリ菌感染胃炎(ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎)」全体に保険診療が適用となりましたが、「ピロリ菌感染胃炎(ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎)」に対する除菌療法の目的は「胃がん予防」です。
ピロリ菌感染者の1000人中3人が胃がんになります。すなわち3500万人中10万5000人という計算になります。
ピロリ菌感染の有無を胃カメラ(内視鏡)から診断することは重要です。そして、除菌療法を行う際には、胃カメラ(内視鏡)による「胃癌の除外」と、「慢性胃炎」の診断が必要になります。
また、胃カメラ(内視鏡)の結果から、胃癌の発生リスクを評価します。
こうしたことを理由に、胃痛があってもなくても特に中高年の方に胃カメラ(内視鏡)を受けることをおすすめする医療機関が増えています。
ほとんどのピロリ菌感染者は、症状もなく、健康に暮らしています。
ピロリ菌感染者のほとんどに軽い胃炎がみられ、約5%の方が胃潰瘍・十二指腸潰瘍を発症し、治療しても高い確率で再発します。そして、約0.3%の方が胃がんを発症します。
なお、胃がん、胃潰瘍、十二指腸潰瘍患者からみた割合では、90%以上の方がピロリ菌陽性です。
ピロリ菌の除菌に成功すると、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発が抑えられ、胃がんの発生リスクも減少します。これは、ピロリ菌がいなくなることが要因のひとつと考えられています。
現在のところ、ピロリ菌未感染の胃から発生する胃がんは胃がん全体の1%以下と考えられています。