ピロリ菌と胃カメラ(内視鏡)

ピロリ菌と胃カメラ(内視鏡)

胃カメラ(内視鏡)検査ピロリ菌の治療には胃カメラ(内視鏡)が必須です。

 

当院では、従来の口からの胃カメラ(内視鏡)よりも負担の少ない鼻からカメラを入れる経鼻胃カメラ(経鼻内視鏡)も活用しています。

 

鼻に麻酔が効くのに20~30分ほどかかりますが、口からの胃カメラ(内視鏡)と違って医師と会話をして、画面を見ながら検査を受けることもできます。もちろん、画面を見なくても構いません。

 

口から行う場合は、鎮静剤を注射して半ば眠った状態で楽に胃カメラ(内視鏡)を受けてもらうこともできます。

 

両者とも検査時間は10~15分程度です。

 

ピロリ菌治療前の「胃炎の診断」に胃カメラ(内視鏡)が必須ですが、「ピロリ菌感染診断」には胃カメラ(内視鏡)は必須ではなく、いくつかの方法があります。この点については別のコンテンツで詳しく説明します。

 

除菌治療を行う前には、胃カメラ(内視鏡)による胃がんの除外の他、「慢性胃炎」の診断が必要になります。すなわち、胃カメラ(内視鏡)所見から「ピロリ菌感染の有無」、「胃がんの有無」、「胃がん発生リスク」、「萎縮性変化の程度」を評価して、その後の方針を明確にします。

 

専門医が胃カメラ(内視鏡)を行うと、胃の粘膜を観察することによってピロリ菌が感染しているかどうかを高い確率で推測することができます。

ピロリ菌未感染者の特徴的な胃カメラ(内視鏡)所見は…

1.RAC (regular arrangement of collecting venules)
2.胃底腺ポリープ
3.稜線状発赤

現在ピロリ菌に感染している人の胃カメラ(内視鏡)所見は…

1.びまん性発赤
2.点状発赤
3.萎縮性変化
4.腸上皮化生
5.ひだの肥厚(皺襞肥大)
6.結節性変化(鳥肌状変化)
7.粘液の付着
8.胃液の混濁
9.黄色斑(キサントーマ)

以前のピロリ菌感染者(既往感染者)の胃カメラ(内視鏡)所見は…

1.斑状発赤
2.地図状発赤

なお、従来、胃炎所見とされてきた出血斑、斑状発赤、櫛状発赤、平坦びらん、隆起びらんは、慢性胃炎の存在しない場合にも認められ、ピロリ菌感染とは無関係な所見です。

 

ピロリ菌感染胃炎(ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎)の胃カメラ(内視鏡)所見の中で、「萎縮性胃炎」および「腸上皮化生」は胃がんの前癌病変として認識されています。

 

特に「胃体部萎縮性胃炎」、「皺襞肥大型胃炎」、「鳥肌胃炎」は、胃がんのハイリスク群と考えられています。

 

ピロリ菌未感染、現感染、既感染の3つをピロリ菌検査および胃カメラ(内視鏡)による診断によって明確に区別し、特に胃がん予防効果の高い若い世代での感染例を見過ごさないことが重要です。

 

では、それぞれについて詳しくみてみましょう。

ピロリ菌未感染の胃

少し専門的な話になりますが、ピロリ菌未感染の正常の胃粘膜では、胃角部や胃体部全体に規則的に配列した細かい発赤点が観察できます。これは、RAC (regular arrangement of collecting venules) と呼ばれ、正常の胃底腺粘膜の所見です。

 

ピロリ菌未感染の胃には特徴があります。胃カメラ(内視鏡)で観察すると、胃粘膜はなめらかで光沢があり、粘液は粘り気が少なくさらさらとしており、胃体部大弯のひだは細くまっすぐに走行しています。胃底腺ポリープ、前庭部および胃体部の稜線状発赤、隆起型びらん(たこいぼ状隆起)などの所見が認められることがあります。

 

ただし、ピロリ菌未感染の胃であっても、幽門腺領域まではRACは認めません。

ピロリ菌現感染の胃

慢性胃炎を反映する胃カメラ(内視鏡)の所見は、RACの消失、びまん性発赤(胃体部~胃底部、点状発赤(胃体部~胃底部)、ひだの肥厚、結節性変化(鳥肌胃炎)、過形成性ポリープです。他にピロリ菌感染と関連する所見としては、粘液付着、胃液の混濁、黄色斑(キサントーマ)などがあります。

 

さらに炎症が続くことによって萎縮性変化が進むと、粘膜ひだの萎縮、粘膜下層血管の透見、腸上皮化生の所見が出現します。

 

特に、萎縮性胃炎、腸上皮化生、皺襞肥大型胃炎、鳥肌胃炎は胃がんのリスク群であるため注意が必要です。

 

ただし、胃底部はもともと胃壁が薄いため、胃底部のみに認められる血管透見像は生理的な血管像を観察している可能性があるため、胃体下部小弯からの血管透見の連続性を確認する必要があります。

ピロリ菌既感染の胃

萎縮を認める場合、あるいは非萎縮性粘膜でのRAC消失所見がある場合は、ピロリ菌感染粘膜あるいは過去の感染既往(既感染)と診断できます。

 

ピロリ菌既感染の胃(除菌後あるいは高度萎縮によるピロリ菌の自然消失)の胃カメラ(内視鏡)観察では、萎縮粘膜を認めますが、胃体部~胃底部の点状発赤やびまん性発赤は消失し、一部にRACが観察されてくることもあり、粘膜がなめらかで光沢を認め、胃体部大弯のひだがほぼ正常であれば、既感染状態を疑う所見です。

 

また、除菌前から存在していた胃体部や前庭部の発赤が除菌により消失することにより、斑状および地図上発赤として新たに認められることもあります。

腸上皮化生

腸上皮化生は、胃粘膜の萎縮性変化がさらに進展した状態であり、この状態になるとピロリ菌の生存に適した環境ではなくなるため、ピロリ菌量は激減し、ピロリ菌が検出できないことが多くなります。

 

胃カメラ(内視鏡)的には萎縮した胃粘膜を背景として、大小さまざまな灰白色の扁平な隆起が多発して認められるのが特徴です。主に幽門前庭部を中心に認められますが、萎縮が進行すると胃体部にも認められるようになります。

皺襞肥大型胃炎(ひだが肥厚した胃炎)

胃カメラ(内視鏡)観察では、十分に送気しても腫大しているように見えるひだを「巨大皺襞」とし、これは除菌療法によって著明に改善します。

 

少し詳しく言うと、胃体部大弯のひだの幅が7mm以上の太いものは4mm以下と比較して胃がんのリスクが33.5倍高まると報告され、特に胃体部のびまん型胃がんのハイリスクとされています。

鳥肌胃炎

鳥肌胃炎は、若い女性に多く、注意が必要となります。

 

鳥肌胃炎とは、胃カメラ(内視鏡)検査であたかも皮膚に見られる鳥肌のように胃粘膜に均一な顆粒状~結節性隆起が密集して認められるものを指し、この所見は幽門前庭部から胃角部に多く観察されます。

 

従来、若年女性に多い生理的な現象と考えられていたのですが、小児のみならず、若年成人のピロリ菌感染者にも多く認められ、この胃炎と消化性潰瘍や胃がんとの合併例も報告されており、鳥肌胃炎は未分化型胃がんのハイリスク胃炎です。

 

鳥肌胃炎の胃カメラ(内視鏡)所見の特徴は、約3mm大前後の結節状隆起が前庭部を中心にほぼ均等に分布し、隆起の中心にやや陥凹した白色斑点が認められます。鳥肌胃炎は、除菌により経時的に結節が消失し、萎縮粘膜へと移行します。

 

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