ピロリ菌除菌後の検査(除菌判定)
当院での除菌判定のポイント
1.原則として除菌後の患者さんを放置することはしません。
2.他の医療機関で除菌療法を受けた方の除菌判定も行います。
3.除菌判定を除菌療法終了後、8週間以降に行っています。
4.除菌診断として尿素呼気試験(UBT)を用いています。
5.患者さんの病状に応じて便中ピロリ菌抗原測定法を用いることもあります。
6.除菌判定に備えて、必ず除菌療法前に現在の内服薬を確認しています。
では、除菌判定について詳しく説明します。
除菌治療後には必ず除菌判定を行います。当院では、原則として除菌後の患者さんを放置することはしません。
当院では、他の医療機関でピロリ菌の除菌療法を受けた方の除菌判定も行っています。
ピロリ菌の治療において、除菌判定は最も注意しなければならない点のひとつです。除菌後、胃の中に本当にピロリ菌が存在していないのか、それともピロリ菌がまだ存在しているのかを除菌判定によって知ることはとても重要です。
ピロリ菌がいなければ、その人の胃はどんどんきれいになっていきますが、ピロリ菌がいればまたいろいろな病気が出現する可能性が残ります。
除菌の成否は、その後の方針を決めるためにも必要な情報です。
それにもかかわらず、ピロリ菌治療の除菌判定が行われていない場合がいまだに少なくないことが問題となっています。除菌成功率が100%の方法は存在しないので、一次・二次除菌療法も含めて、治療後は一定期間後に除菌の成否を判定することにしています。
治療前の感染診断と違って、除菌判定で大事なことは、「ピロリ菌が感染していないことを確実に診断すること」です。
日本ヘリコバクター学会のガイドラインでは除菌療法後の除菌判定として、尿素呼気試験(UBT)、単クローン体を用いた便中ピロリ菌抗原測定法のいずれかが推奨されています。両者の併用により判定精度が増します。
ガイドラインでは、すべての治療が終了した後、4週間以上経過してから、ピロリ菌除菌に成功したのかどうか、除菌判定を行う必要があります。この根拠は、除菌後1ヶ月経つと95%以上の症例で菌体数が回復するためです。
当院では、各報告を検討した結果、除菌判定は除菌療法終了後4週間以降、なるべく遅い時期に行うのがよいと考えています。除菌療法終了後から除菌判定までの間隔が長いほど判定精度が高くなるからです。
当院では除菌判定を除菌療法終了後8週間以降に行っています。
当院では、除菌診断として尿素呼気試験(UBT)を用いています。患者さんの病状に応じて便中ピロリ菌抗原測定法を用いることもあります。
尿素呼気試験(UBT)は、簡便で安全であり、各国ガイドラインでも最も信頼性の高い診断法と位置づけられています。
除菌療法後は菌数が激減し、また他の雑菌が増殖しているため、少数のピロリ菌を検出できる高い精度をもった検査法が要求されます。
尿素呼気試験(UBT)は、胃粘膜全体を調べる診断法であり、診断精度が高いことが特徴です。しかも患者さんへの身体的負担がなく、検査自体が単純です。
ただし、尿素呼気試験(UBT)による除菌判定においては、特にプロトンポンプ阻害剤(PPI)を服用している方に対する注意が必要となります。
プロトンポンプ阻害剤(PPI)はピロリ菌の胃内分布に影響を及ぼしています。すなわち、プロトンポンプ阻害剤(PPI)服用により、ピロリ菌感染密度は低下し、この低下は胃体部に比べて幽門部でより強くなります。
尿素呼気試験(UBT)のプロトンポンプ阻害剤(PPI)服用時の偽陰性率は6%前後と報告されています。
これに対して便中抗原法はプロトンポンプ阻害剤(PPI)服用の影響を受けないとされています。
すなわち、プロトンポンプ阻害剤(PPI)を休薬することが困難な方の除菌判定は、尿素呼気試験(UBT)よりも便中抗原法が有用です。また、小児や胃切除後の方にも便中抗原法が用いられます。
また残胃例では尿素呼気試験(UBT)の偽陰性率が高いことが問題となりますが、便中抗原法は他の方法に比べて正診率が高いとする報告もあり、残胃の判定にも便中抗原法が推奨されています。
プロトンポンプ阻害剤(PPI)は、逆流性食道炎の治療や、抗血小板療法・抗凝固療法を受けている虚血性心疾患や脳梗塞の患者さんの消化管出血予防としてよく使われていますが、プロトンポンプ阻害剤(PPI)を服用していることを自覚していない患者さんも多いのです。
プロトンポンプ阻害剤(PPI)や抗菌薬などピロリ菌に対する静菌作用や抗菌活性のある薬剤の使用がある場合は、偽陰性を防ぐためにも、少なくとも2週間、できれば4週間中止することが望ましいとされています。
当院では、必ず除菌療法前に現在の内服薬を確認しています。