甲状腺機能亢進症の診断
動悸、発汗過多、体重減少、振戦など甲状腺ホルモン作用過剰の症状、甲状腺腫、発熱、甲状腺部の自発痛と圧痛、の3点が診断の出発点となります。
甲状腺ホルモン値(FT3とFT4)とTSH(甲状腺刺激ホルモン)を測定して、甲状腺ホルモン値が高ければ甲状腺機能亢進症と診断します。
初診時に必要な検査
- 甲状腺機能検査:FT4(甲状腺ホルモン)、TSH(甲状腺刺激ホルモン)
- 発熱と甲状腺に痛みがある時はCRP、甲状腺超音波検査(甲状腺エコー)
- びまん性甲状腺腫でバセドウ病が疑われる時は、抗TSH受容体抗体(TRAb)測定
- 不整脈(心房細動)や心不全が疑われる時は、心電図、胸部X線検査
原因疾患の鑑別手順
症状から甲状腺機能亢進症が疑われる場合は甲状腺機能検査を施行し、高甲状腺ホルモン血症とTSH(甲状腺刺激ホルモン)の低下で甲状腺機能亢進症と診断します。
TSHが低値であることを確認することが前提ですが、TSHの低下がない場合は、TSH依存性(中枢性)として専門医のもとでさらなる精査が必要になります。
甲状腺部に痛みや圧痛があり、発熱がある時は亜急性甲状腺炎を疑って、採血時に炎症反応(CRP)を加えて、甲状腺エコー検査を行います。発熱と甲状腺部の自発痛・圧痛があり、炎症反応が高値で、甲状腺エコー検査で痛みや硬結の部位に一致して低エコー域を認めれば、亜急性甲状腺炎と診断します。
甲状腺機能亢進症があって、痛みや発熱がなく、びまん性甲状腺腫の場合、または甲状腺を触知しない場合、ほとんどはバセドウ病か無痛性甲状腺炎と診断できます。
両者の鑑別には抗TSH受容体抗体(TRAb)を測定して、陽性ならばバセドウ病、陰性ならば無痛性甲状腺炎と診断します。
抗TSH受容体抗体(TRAb)陰性の場合は、甲状腺刺激抗体(TSAb:EIA法)を測定します。
これらが陽性であればバセドウ病、陰性であれば無痛性甲状腺炎と診断してほぼ間違いありません。
少し専門的になりますが、抗TSH受容体抗体陰性のバセドウ病と、抗TSH受容体抗体陽性の無痛性甲状腺炎がわずかに存在するため、どちらか紛らわしい場合は妊娠していないことを確認のうえで放射性ヨードまたはテクネシウムを用いたシンチグラフィが施行されます。取り込みが亢進していればバセドウ病、著明に低下していれば無痛性甲状腺炎と診断します。
これらの検査は当院では施行できませんので、専門医療機関に紹介しています。
日本では機能性結節性病変は少なく、検査可能な施設も限られるので、抗TSH受容体抗体検査の結果でどちらか迷うような場合や機能性結節が疑われる場合にはシンチグラフィが行われます。
この場合も当院から専門医療機関に紹介しています。
産後の無痛性甲状腺炎診断でアイソトープ検査を行う場合は、授乳を中断する必要があるため中断を望まない場合は経過により診断することになります。