乳幼児期にB型肝炎ウイルス感染が起こった場合、90%以上の患者さんでは宿主の免疫応答が弱いため、B型肝炎ウイルスを排除することができずに持続感染になってしまいます。
B型肝炎ウイルスに対する免疫寛容が続いて、肝細胞障害も起こらない状態、すなわち「無症候性キャリア」となります。これを「免疫寛容期」と呼んでいます。
その後、時期は個人差がありますが、B型肝炎ウイルスに対する免疫応答が活発になって、肝細胞障害が起こり、ALT値が上昇します。これを「免疫応答期」と呼びます。
免疫応答期に入ると、多くの患者さんではHBV DNAの増殖が抑制されて、HBe抗原が消失してHBe抗体が出現します。これを「HBe抗原セロコンバージョン」と呼びます。
その結果、肝炎は鎮静化し、HBV DNA量は低値となり、ALTは正常化します。これを「非活動性キャリア」と呼びます。
一部の症例では、その後HBs抗原が消失してHBs抗体が出現します。これを「HBs抗原セロコンバージョン」と呼びます。この状態は臨床的にB型肝炎が治癒したとされます。
一方、無症候性キャリアのうち、約10%の患者さんでは免疫応答期に入ってもHBV DNA増殖抑制やHBe抗原セロコンバージョンが起こらず、肝細胞障害が長期間持続します。これを「HBe抗原陽性慢性肝炎」と呼びます。
HBe抗原セロコンバージョンを起こした患者さんのうち10-20%では、HBe抗原セロコンバージョン後にHBe抗原陰性の状態でHBV DNAが再増殖して、B型肝炎が再燃します。これを「HBe抗原陰性慢性肝炎」と呼びます。
また、4-20%の患者さんでは、HBe抗体消失ならびにHBe抗原の再出現を認めます。これを「リバースセロコンバージョン」と呼びます。