脂質異常症1:脂質異常症とは?
2018.12.23更新
脂質異常症とは血液中の脂質濃度が異常値を示す疾患です。
その診断と治療の目的は動脈硬化性疾患および急性膵炎の予防です。
脂質異常症の診断基準は動脈硬化性疾患の予防を主たる目的として設定されています。
LDLコレステロール(LDL-C)、トリグリセライド(中性脂肪:TG)、HDLコレステロール(HDL-C)と動脈硬化性疾患との関係性は、脂質値の増加とともに(HDLコレステロール(HDL-C)の場合は低下)連続性に疾患イベントの増加が認められます。
LDLコレステロール(LDL-C)140mg/dL以上を高LDLコレステロール(LDL-C)血症、HDLコレステロール(HDL-C)40mg/dL未満を低HDLコレステロール(HDL-C)血症、トリグリセライド(中性脂肪:TG) 150mg/dL以上を高トリグリセライド(中性脂肪:TG) と定義しています。
今回のガイドライン改訂により、non-HDL-Cも診断基準に加えられ、non-HDL-Cが170mg/dL以上で脂質異常症と診断できます。
高リスク病態では、LDLコレステロール(LDL-C) 120mg/dL、non-HDL-Cが150mg/dL以上で脂質異常症と診断されます。
診断は原則として10時間以上の絶食後に採血した検体から総コレステロール(TC)、トリグリセライド(中性脂肪:TG)、HDLコレステロール(HDL-C)を測定し、LDLコレステロール(LDL-C)を計算式または直接法で求めた後の値に基づいて行います。ただし、検査前に水やお茶などカロリーのない水分の摂取は可能です。
2017年のガイドライン改訂から、総コレステロール(TC)からHDLコレステロール(HDL-C)を引いたnon-HDL-Cも脂質異常症の診断に用いることができるようになりました。
脂質異常症は冠動脈疾患などの動脈硬化性疾患を起こす主要リスクの1つです。
総コレステロール(TC)もしくはLDLコレステロール(LDL-C)が高値の場合に、冠動脈効果疾患の発症率が上がることは多くの調査で明らかになっています。
複数の研究結果から、総コレステロール(TC)、LDLコレステロール(LDL-C)高値は加齢、糖尿病、高血圧、喫煙とともに冠動脈疾患の発症率と死亡率を増加させることが示されています。
高度の高トリグリセライド(中性脂肪:TG)は急性膵炎を起こす可能性があり、その診断・治療は重要です。
日本における脂質異常症の頻度は男性約23%、女性約18%とされています。
日本動脈硬化学会では、脂質異常症を中心とする治療方針の改訂を2017年6月に5年ぶりに行って、新たなエビデンスや研究成果に基づいた「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」を発表しました。
今回の改訂のポイントは以下の通りです。
・絶対リスクの算出を吹田研究に基づき、10年間の冠動脈疾患の発症をエンドポイントとして行ったこと
・高尿酸血症、睡眠時無呼吸症候群をリスクとして考慮すべき状態として取り上げたこと
・家族性高コレステロール血症(FH)に関して、小児FHに対するスタチンの適応拡大などに伴って、診断・治療に関する記載を拡充したこと
・FHや急性冠症候群など二次予防での高リスク状態においてLDLコレステロール(LDL-C) 100mg/dL未満よりさらに厳格な脂質管理目標を提言したこと
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